養蚕法「清温育」

更新日:2021年12月01日

清温育について

明治元年(1868)に発明されたといわれる「清温育」は、明治17年(1884)までに確立されたと考えられています。「清温育」は、人工的に温度と湿度を管理した「温暖育」と、自然にまかせた「清涼育」の長所を取り入れた「折衷育(せっちゅういく)」と言われています。「清温育」の特徴は、気温と換気を重視するとともに、蚕の食べる桑の管理の仕方や、蚕の成長段階に応じた桑の与え方をマニュアル化したことです。

飼育のポイント

  • 脱皮前(眠期の直前)は給桑量を増やす

             この時期は食欲が旺盛なため、給桑量を増やすと体力がつき、丈夫な蚕になる。

  • 天窓を作り、炭火の温めすぎによる濁った空気を抜く

             蚕は湿気や乾燥を嫌うため、換気により蚕室の温度・湿度を適切に調整し、清潔に保つ。

  • 蚕座(さんざ:蚕を飼育する場所)は、適度に乾燥した状態にする
  • 桑は各齢に合わせ刻み幅を切りそろえる

             食べ残しを少なくし、清潔に保つ。など、細かく決められていました。

「清温育」の普及

「清温育」は、適度に室内を暖め、温度(21~24度)と湿度を管理し、その飼育日数は35日前後を目標としていました。収穫量は温暖育と清涼育の中くらいですが、手順に従い温度管理に気をつければ、失敗が少なく安全な飼育法といわれていました。輸出生糸の需要増大を背景に、明治期には全国各地で養蚕が行われるようになりましたが、それまで養蚕の経験の少なかった土地や様々な気候の土地においても、その手順に従えばどんな地域でも行うことができたので、全国に広がりました。

さらなる発展

この「清温育」は、その後、弟子たちによってさらに改良され、完成していきました。「清温育」は、ただ「温暖育」と「清涼育」の良い点を取り入れただけではなく、実体験に裏付けられたオリジナル性の高い飼育法でした。
例えば、蚕室の温度と湿度の管理については、

  • 秋から春先にかけて着る裏地付きの着物の袷(あわせ)一枚でちょうど良いくらいの室温が良いこと。
  • 蚕籠(かいこかご)の縁を手で触って人肌と同じ温度なら良いこと。

など、わかりやすく具体的な例えを使い、体験から生み出した飼育法を指導したため、温度計がない養蚕農家でも「清温育」を行うことができました。

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