水質基準
水には、物質を溶かし込む性質があり、さまざまな物質が含まれています。そのため水道水は、これらの物質がどの程度までなら安全か?という基準が、水道水の水質基準として定められています。
項目 | 基準値 | 区分 | 説明 | 主な使われ方 |
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1.一般細菌 | 100個/mL以下 | 病原生物による汚染の指標 | 水の一般的清浄度を示す指標であり、平常時は水道水中には極めて少ないですが、これが著しく増加した場合には病原生物に汚染されている疑いがあります。 | |
2.大腸菌 | 検出されないこと | 人や動物の腸管内や土壌に存在しています。水道水中に検出された場合には病原生物に汚染されている疑いがあります。 | ||
3.カドミウムおよびその化合物 | 0.003mg/L以下 | 無機物・重金属 | 鉱山排水や工場排水などから河川水などに混入することがあります。イタイイタイ病の原因物質として知られています。 | 電池、メッキ、顔料 |
4.水銀およびその化合物 | 0.0005mg/L以下 | 水銀鉱床などの地帯を流れる河川や、工場排水、農薬、下水などの混入によって河川水などで検出されることがあります。有機水銀化合物は水俣病の原因物質として知られています。 | 温度計、歯科材料、蛍光灯 | |
5.セレンおよびその化合物 | 0.01mg/L以下 | 鉱山排水や工場排水などの混入によって河川水などで検出されることがあります。 | 半導体材料、顔料、薬剤 | |
6.鉛およびその化合物 | 0.01mg/L以下 | 鉱山排水や工場排水などの混入によって河川水などで検出されることがあります。水道水中には含まれていませんが鉛管を使用している場合に検出されることがあります。 | 鉛管、蓄電池、活字、ハンダ | |
7.ヒ素およびその化合物 | 0.01mg/L以下 | 地質の影響、鉱泉、鉱山排水、工場排水などの混入によって河川水などで検出されることがあります。 | 合金、半導体材料 | |
8.六価クロム化合物 | 0.02mg/L以下 | 鉱山排水や工場排水などの混入によって河川水などで検出されることがあります。 | メッキ | |
9.亜硝酸対窒素 | 0.04mg/L以下 | 生活排水、下水、肥料などに由来する有機物性窒素化合物が、水や土壌で分解される過程でつくられます。高濃度では乳幼児にメトヘモグロビリン血症(チアノーゼ症状)を起こすことがあります。 | ||
10.シアン化物イオンおよび塩化シアン | 0.01mg/L以下 | 工場排水などの混入によって河川水などで検出されることがあります。シアン化カリウムは青酸カリとして知られています。 | 害虫駆除剤、メッキ | |
11.硝酸態窒素および亜硝酸態窒素 | 10mg/L以下 | 肥料や火薬の原料に用いられています。高い濃度では乳幼児にメトヘモグロビン血症(チアノーゼ症状)を起こすことがあります。 | 無機肥料、火薬、発色剤 | |
12.フッ素およびその化合物 | 0.8mg/L以下 | 主として地質や工場排水などの混入によって河川水などで検出されます。適量摂取は虫歯の予防効果があるとされていますが、高濃度に含まれると斑状歯の症状が現れることがあります。 | フロンガス製造、表面処理剤 | |
13.ホウ素およびその化合物 | 1.0mg/L以下 | 火山地帯の地下水や温泉、ホウ素を使用している工場からの排水などの混入によって河川水などで検出されることがあります。 | 表面処理剤、ガラス、エナメル工業、陶器、ホウロウ | |
14.四塩化炭素 | 0.002mg/L以下 | 一般有機物 | 化学合成原料、溶剤、金属の脱脂剤、塗料、ドライクリーニングなどに使用され、地下水汚染物質として知られています。 | フロンガス原料、ワックス、樹脂原料 |
15.1,4-ジオキサン | 0.05mg/L以下 | 洗浄剤、合成皮革用溶剤 | ||
16.シス-1,2-ジクロロエチレンおよびトランス-1,2-ジクロロエチレン | 0.04mg/L以下 | 溶剤、香料、ラッカー | ||
17.ジクロロメタン | 0.02mg/L以下 | 殺虫剤、塗料、ニス | ||
18.テトラクロロエチレン | 0.01mg/L以下 | ドライクリーニング | ||
19.トリクロロエチレン | 0.01mg/L以下 | 溶剤、脱脂剤 | ||
20.ベンゼン | 0.01mg/L以下 | 染料、合成ゴム、有機顔料 | ||
21.塩素酸 | 0.6mg/L以下 | 消毒副生成物 | 消毒剤の次亜塩素酸ナトリウムおよび二酸化塩素の分解生成物です。 | 試薬 |
22.クロロ酢酸 | 0.02mg/L以下 | 原水中の一部の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されます。 | ||
23.クロロホルム | 0.06mg/L以下 | |||
24.ジクロロ酢酸 | 0.03mg/L以下 | |||
25.ジブロモクロロメタン | 0.1mg/L以下 | |||
26.臭素酸 | 0.01mg/L以下 | 原水中の臭化物イオンが高度浄水処理のオゾンと反応して生成されます。 | 毛髪のコールドウエーブ用薬品 | |
27.総トリハロメタン | 0.1mg/L以下 | クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムの合計を総トリハロメタンといいます。 | ||
28.トリクロロ酢酸 | 0.03mg/L以下 | 原水中の一部の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されます。 | ||
29.ブロモジクロロメタン | 0.03mg/L以下 | |||
30.ブロモホルム | 0.09mg/L以下 | |||
31.ホルムアルデヒド | 0.08mg/L以下 | |||
32.亜鉛およびその化合物 | 1.0mg/L以下 | 着色 | 鉱山排水、工場排水などの混入や亜鉛メッキ鋼管からの溶出に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると白濁の原因となります。 | トタン板、合金、乾電池 |
33.アルミニウムおよびその化合物 | 0.2mg/L以下 | 工場排水などの混入や、水処理に用いられるアルミニウム系凝集剤に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると白濁の原因となります。 | アルマイト製品、電線、ダイカスト、印刷インク | |
34.鉄およびその化合物 | 0.3mg/L以下 | 鉱山排水、工場排水などの混入や鉄管に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると異臭味(カナ気)や、洗濯物などを着色する原因となります。 | 建築、橋梁、造船 | |
35.銅およびその化合物 | 1.0mg/L以下 | 銅山排水、工場排水、農薬などの混入や給水装置などに使用される銅管、真鍮器具などからの溶出に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると洗濯物や水道施設を着色する原因となります。 | 電線、電池、メッキ、熱交換器 | |
36.ナトリウムおよびその化合物 | 200mg/L以下 | 味 | 工場排水や海水、塩素処理などの水処理に由来し、高濃度に含まれると味覚を損なう原因となります。 | 苛性ソーダ、石鹸 |
37.マンガンおよびその化合物 | 0.05mg/L以下 | 着色 | 地質からや、鉱山排水、工場排水の混入によって河川水などで検出されることがあり、消毒用の塩素で酸化されると黒色を呈することがあります。 | 合金、乾電池、ガラス |
38.塩化物イオン | 200mg/L以下 | 味 | 地質や海水の浸透、下水、家庭排水、工場排水およびし尿などからの混入によって河川水などで検出され、高濃度に含まれると味覚を損なう原因となります。 | 食塩、塩素ガス |
39.カルシウム、マグネシウム等(硬度) | 300mg/L以下 | 硬度とはカルシウムとマグネシウムの合計量をいい、主として地質によるものです。硬度が低すぎると淡泊でこくのない味がし、高すぎるとしつこい味がします。また、硬度が高いと石鹸の泡立ちを悪くします。 | カルシウム:肥料、さらし粉 マグネシウム:合金、電池 |
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40.蒸発残留物 | 500mg/L以下 | 水を蒸発させたときに得られる残留物のことで、主な成分はカルシウム、マグネシウム、ケイ酸などの塩類および有機物です。残留物が多いと苦み、渋みなどを付け、適度に含まれるとまろやかさを出すとされます。 | ||
41.陰イオン界面活性剤 | 0.2mg/L以下 | 発泡 | 生活排水や工場排水などの混入に由来し、高濃度に含まれると泡立ちの原因となります。 | 合成洗剤 |
42.ジェオスミン | 0.00001mg/L以下 | カビ臭 | 湖沼などで富栄養化現象に伴い発生するアナベナなどの藍藻類によって産生されるカビ臭の原因物質です。 | |
43.2-メチルイソボルネオール | 0.00001mg/L以下 | 湖沼などで富栄養化現象に伴い発生するフォルミジウムやオシラトリアなどの藍藻類によって産生されるカビ臭の原因物質です。 | ||
44.非イオン界面活性剤 | 0.02mg/L以下 | 発泡 | 生活排水や工場排水などの混入に由来し、高濃度に含まれると泡立ちの原因となります。 | 合成洗剤、シャンプー |
45.フェノール類 | 0.005mg/L以下 | 臭気 | 工場排水などの混入によって河川水などで検出されることがあり、微量であっても異臭味の原因となります。 | 合成樹脂、繊維、香料、消毒剤、防腐剤の原料 |
46.有機物(全有機炭素(TOC)の量) | 3mg/L以下 | 味 | 有機物などによる汚れの度合を示し、土壌に起因するほか、し尿、下水、工場排水などの混入によっても増加します。水道水中に多いと渋みをつけます。 | |
47.pH値 | 5.8以上8.6以下 | 基礎的性状 | 0から14の数値で表され、pH7が中性、7から小さくなるほど酸性が強く、7より大きくなるほどアルカリ性が強くなります。 | |
48.味 | 異常でないこと | 水の味は、地質又は海水、工場排水、化学薬品などの混入および藻類など生物の繁殖に伴うもののほか、水道管の内面塗装などに起因することもあります。 | ||
49.臭気 | 異常でないこと | 水の臭気は、藻類など生物の繁殖、工場排水、下水の混入、地質などに伴うもののほか、水道水では使用される管の内面塗装剤などに起因することもあります。 | ||
50.色度 | 5度以下 | 水についている色の程度を示すもので、基準値の範囲内であれば無色な水といえます。 | ||
51.濁度 | 2度以下 | 水の濁りの程度を示すもので、基準値の範囲内であれば濁りのない透明な水といえます。 |
更新日:2022年10月11日