環境保全協定の概要
環境保全協定の締結に向けて
- はじめに
- 我が国では、高度経済成長期に産業の急激な発展によって大気汚染や水質汚濁、騒音や振動などの深刻な公害問題が起こり、私たちの生活を脅かすようになったことから、1960 年代に入りこれらの公害を防止することが緊急な課題となりました。
日本各地では公害に対する住民運動や集団訴訟が起こる一方で、公害に対する法的規制が進められ、1967年には「公害対策基本法」が成立するなど、その後も環境を保全し、公害を規制していくための法整備が進められていきました。
近年では、こうした公害の防止や規制を図るといった従来からある考え方に加え、高度な産業形態を保持し、快適な生活環境を確保しながら、地球環境に負荷をかけない低炭素型社会の構築が求められるようになりました。
特に企業や事業所には積極的な生産活動を進めていただく一方で、地域環境に配慮した環境保全行動計画を立てつつ、それに基づく具体的な取り組みが期待されています。
- 藤岡市における環境保全にかかる取り組み
- 藤岡市の西部には、1,500メートルを超える赤久縄山をはじめ、御荷鉾山などの山々が連なり、鮎川の清流は利根川の支流である鏑川、烏川へと流れ込んでいます。
また埼玉県境を流れる神流川のほかに幾つかの湖沼などもあり、山川草木は豊かな自然を育んでいます。産業では古くから瓦の生産が盛んであり、その過程で生じるばい煙は大気や臭気問題を引き起こすこともありました。昭和30年代後半から大手企業などの進出や進出の噂もあり、養蚕業等に悪影響を及ぼすのではないかと不安を募らせた地元住民の中には、事業者との間で公害に関する念書や誓約書などを交わしました。
40年代頃から開業が始まったゴルフ場は、バブル期の終焉頃まで建設が続き、以降ゴルフコースの維持管理のために大量の農薬が使用され、河川の水質悪化が問題となったことから、藤岡市は平成元年から鮎川水系の水質調査を始めるとともに、平成3年6月には市内8つのゴルフ場と環境保全協定を締結しました。
その一方で地域環境に関心を持った市民グループも現れ、一般市民の環境に対する意識が高まっていきました。
50年代前半には、一部の畜産農家が河川に汚物を直接流していたことも明らかになり、市は行政指導を行うとともに、覚書を交わすということもありました。
昭和60年代以降では、既存の工業団地に加え、牛田工業団地、本動堂工業団地、西部工業団地、東平井工業団地、三本木工業団地、北部工業団地などが造成され、これらの工業団地に次々と企業が進出してきました。
また国の高速交通網整備計画により、高速自動車道や新幹線が建設されると、住民の生活環境も大きく変わり、騒音や振動といった問題も発生するようになりました。
このような経過の中で、特に事業所等の生産活動によって生じやすい大気汚染や水質汚濁、騒音、振動などは住民の生活環境に大きな影響を与え兼ねないため、藤岡市では新たに工業団地へ進出する企業を中心に公害防止協定や環境保全協定の締結を行うなど、公害防止対策を推進するとともに、地域の生活環境を監視してきました。 - この他、当市では住民生活における良好な環境を維持・保全するために、国の法令等に基づく環境調査に加え、群馬県などの関係機関と環境保全のための様々な連携を図るとともに、独自の環境調査や河川の水質調査なども行ってきました。
- 環境分野における新たな課題
- 私たちの快適な日常生活や事業生産活動などによって発生する二酸化炭素などは、オゾン層の破壊や地球の温暖化に大きな影響を及ぼしているという事実が公表され、近年では自然環境への配慮や保全への取り組みの重要性が世界的に認識されるようになり、地球環境の保持・保全は人類共通の新たな重要課題になっています。
この重要な課題に真摯に向き合い、恵み豊かな自然環境や大切な生活環境を健全な状態で未来の子供たちに引き継ぎ、環境負荷の少ない持続的に発展することができる社会を実現することは私たちの責務と言えます。
このことはスローガンに終わることなく、行政や事業所や市民それぞれが自らの責任を自覚し、協働して個々具体的な環境問題に取り組むことが必要です。
- 公害防止協定から環境保全協定へ
- 当市では新たな環境課題に対し、良好な生活環境の保全および創造を図るため、平成10年に「藤岡市環境基本条例」を制定し、基本施策や推進体制づくりなどを進めてきました。
そしてこの条例制定の理念に基づき、事業者に法令等で定められた環境規制基準等を順守させていくという環境管理型の考え方に加え、事業者自らが自主的・主体的に環境保全活動に参加し、持続可能な低炭素型社会を実現するという視点を取り入れたことにより、従来の「公害防止協定」から「環境保全協定」へと全面的な改正を行い、その後も一部改正がなされました。
さらに、上記の「環境保全協定書」中には環境規制基準値が明示されていることから、法律や県条例の改廃、「群馬県の生活環境を保全する条例」や「群馬県が造成した工業団地等へ進出する企業に対する公害防止指導基準」等に改正や変更が生じた場合には、手続き上の遅れなどから整合性が図られなくなるため、「藤岡市環境基本条例」の理念を保持しながら「(旧)環境保全協定書」中の環境規制基準値の項目を全面的に削除するなど、平成25年12月に「(新)環境保全協定書」に全面改正いたしました。
- 新環境保全協定のねらいと推進
- 1.環境保全活動への率先参加
「藤岡市環境基本条例」の理念に基づき、事業者自らが生産活動等を行う中で、地域住民の生活や健康に配慮し、騒音、振動、悪臭、大気・水質・土壌汚染などの公害発生を未然に防止することに努め、公害のないまちづくりに率先して参加することを期待するものです。
2.法的効力と地域社会との共生
本協定書には法的拘束力がありませんが、事業所としての誠実な対応は必要になります。また法規に基づく環境基準等は順守する必要があります。
事業所等の社会における役割と責任を確認し、各事業所が長年培ってきた高い技術やノウハウを環境保全のために活かし、地域社会と共生することを目指しています。
3.「新環境保全協定」締結の推進
藤岡市では市内の事業者等と良きパートナーシップ関係を築き、持続可能な低炭素社会の実現に向けた取り組みを行うなかで、本協定の趣旨に賛同いただけるすべての事業所と藤岡市との間で「(新)環境保全協定書」の締結を進めます。
- 終わりに
- 日本では、かつて熊本県の水俣病や富山県神通川流域のイタイイタイ病、四日市喘息などの重大な公害を引き起こし、その結果地域の住民が大変な苦しみに合いました。
現在もその後遺症に苦しむ人たちがいます。
人の健康を守り生活環境を保全する環境基準はこのような背景から生まれてきました。この問題の発生原因は、住民の安全・安心な生活環境を保守するよりも産業経済活動を極端に優先させてきた結果にほかなりません。この反省があって、今日のわが国では事業所等の事業生産活動と、身近な環境の保全に加え、地球規模の環境保全との双方の調和が保てるような取り組みに着手し始めています。
各事業所等は、私たちが生活していく上でなくてはならいものであり、環境保全のための一翼を担う能力がある一方で、社会的に大きな責任と役割を有していると考えています。
各事業所等はまさに将来にわたり、安定的な環境保全活動を継続し、実践できる大切なパートナーです。豊かな自然の恵みによって育まれてきた私たちは、安全で安心な生活環境を後世に引き継いでいくために、不断の努力を惜しむことなく、自然と人間の活動が調和し、資源が循環する社会の構築を目指し、その恩恵を共に味わうことができる地域を創造し、市民、事業者および行政が一体となって環境保全に取り組むべき、その重要な岐路に立っています。
藤岡市では市民、事業所、行政が力を合わせて、持続可能な社会を構築するために、
自然や生活環境を保全する活動の輪が日ごとに広がっていくことを願っています。
更新日:2021年12月01日